風鈴製作者 空、その底辺でボソリ…(7年目その3)

『如何に存続するかが問題ではない。いつ転換し、どう畳むかが問題だ』


 金は全てじゃない! ほとんどだっ!(挨拶)


 なんかずっと寒い日が続いている。朝方はたまに氷点下になっているし、この間、降った雪はまだ残っていたりするし――――で、温暖化がなんだって?
 実際、金で救われる命は確かに多く存在するし、人の心は慰謝料という名の(司法によって認定される場合すらある)金によって左右されるし、時間だって、充分な金があれば働かなくてよい、と考えれば買うことができると言えるだろう。金でどうにもできないのは、その時点で人間が有するいかなる手段をもってしても実現不可能なことだけだ。(例えば、飛行機械を用いない単独飛行はまずできない。せいぜい高所から飛び降りるくらいだが、それは飛行ではなく落下だ。また宇宙遊泳を飛行と主張する人もいるかもしれないが、一般にそれは浮遊だろう)
 まあどうでもいい。個々人の経験とそれに基づく解釈の問題だ。普遍性のある主張ではない。
 ところで、すでに一昨日の話になるが、東京駅内の本屋で『ONE PIECE』の最新刊を売っていた。発売日なのだから当たり前じゃないか、と思うだろうが、わざわざ通常の開店時間前の朝7時に、他の店のシャッターがまだ閉まっている中で、長机を引っ張り出して、ONE PIECE』だけ売っていたのである。
 まあ狙いは想像できる。最近は大人が少年漫画を読むのも普通になったし、『ONE PIECE』は刷っている部数も他に比べ圧倒的、メディアにも殊更に取り上げられている作品だ。通勤客の中にもいち早くコミックを手に入れて、読みたい人がいるだろうから、いち早く販売して少しでも多く売ろう、という意図なのだろう。
 確かにAmazonBookOffを初めとした古本チェーンが台頭して以来、漫画は初動が命だ。街に店舗を構えた一般書店にとって、唯一の優位点は、いち早く読者に本を手渡すことができることである。その辺りを強く意識しているからこその早売り行為なのだろうが、ぶっちゃけ盛況には程遠い様子だった。道行くサラリーマンは声を張り上げる販売員を一瞥するだけで通り過ぎ、どこかのブロガーらしき人が写真を撮らせてもらっているのが、とても印象的だった。


 とどのつまり、早売りに拘るのはコアなファンくらいで、普通の人は興味を示さない。どこでも、いつでも買えるからだ。しかも前述したように少し待てば古本チェーンで少し安く手に入る(個人的には、作家とは買い支えるものだと思っているので、これは推奨しないが、そうするのも自由だ)。こうして本屋はますます苦境に追い詰められていく。電子書籍が音楽ジャンルほどに一般的になれば、止めを刺されるだろう。より安価で、より簡易に入手しやすくなるからだ。いずれ紙媒体の本は亜流になり、ある種のコレクションアイテムになるだろうし、すでに少しずつなりつつある。


追記
 ……『ONE PIECE』? 風鈴製作者は買ってないよ。だから広告も貼らないよ。